- 耳がきこえるとは・・・
昔は、耳介で集められ、外耳道というトンネルの中を伝わり、鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は、耳小骨(ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの小さい骨が連なっています)のはたらきで、音を増幅し効果的にその奥の内耳へと伝えます。その内耳の蝸牛の中で音を感じとり、その信号が神経を介してさらに脳へ行き、音を認知するというしくみです。
鼓膜から内耳までの間が中耳と呼ばれるところで、通常はその鼓膜の内側である中耳腔(鼓室)は空気が満たされた空洞になっています。
この中耳腔は耳管という管で鼻の奥とつながっています。どなたも強く鼻をかんだ時に耳に空気が抜けるのを自覚すると思います。そのように山に登って耳がつまった時、鼻をつまんで息を鼻から出そうとすると、耳に空気が流れるのがわかります。
- 滲出性中耳炎とは・・・
滲出性中耳炎とは、鼓膜の奥(中耳腔)に液体がたまる中耳炎のことです。この液体には、さらさらしたものから粘っこいものまであり、滲出液とか、貯留液と呼ばれています。
中耳腔にこのような液体がたまると、鼓膜や耳小骨の動きがわるくなり、外耳道を伝わってきた音が鼓膜から耳小骨そして内耳へときちんと伝わらなくなり、そのために、聞こえがわるくなるのです。
- 滲出性中耳炎はどのような症状がでるのでしょうか。
みなさんは山に登った時、耳がつまったように感じたことがありませんか。滲出性中耳炎もこれとよく似た症状を訴えます。
大人では、難聴を訴え、耳に栓をしている様なつまった感じを伴い、自分の声が耳に響く感じがしたり、また耳の中で水の音がしたりします。
子供の難聴の多くは、この滲出性中耳炎によるものです。しかし、子供では、ことに幼児では自分から症状を訴えることは少ないので、なかなか見つからないこともあります。一番良い方法は、定期的に耳を診察してもらうことですが、実際には、なかなかむずかしいことが多いようです。そこで要注意のサインをいくつかあげましょう。これらの症状や徴候があったら、滲出性中耳炎の存在を疑ってください。
- 「テレビの音を大きくする」、「大きな声でおしゃべりする」、「呼んでもふりむかない、返事をしない」あるいは、「電話でのおしゃべりができない」などの症状があれば、難聴を疑ってみてください。
- 家庭でできる難聴の検査としては、指をこすったり、紙をクシャクシャとまるめて、その音がどちらから聞こえてくるかを当てさせる方法があります。
- 赤ちゃんで、よくカゼをひき気げんの悪いことが多いときは、中耳炎があるかもしれません。
- よく耳をさわる(これは耳痛のサインといわれています)ことがあれば、一度耳鼻咽喉科へつれてゆきましょう。
- 以前に中耳炎を起こしたことがある子供の場合、カゼの後に咳や鼻汁、鼻閉が数日以上長引く時は中耳炎を再発していることがよくあります。
- 中耳炎を一度起こすとなおりにくい場合も滲出性中耳炎が奥底にかくれていることがあります。
- 3歳以上の子供では、ときどき耳の軽い痛みを訴えることがあります。
- どのような子供が滲出性中耳炎にかかりやすいのでしょうか
滲出性中耳炎にかかりやすい子供にはいくつかの共通点があります。
- 乳幼児では、人工栄養児に多くみられます。
- カゼをひきやすく、いつも鼻がぐずぐずしていたり、咳が続いている。
- いわゆる蓄膿症(慢性副鼻腔炎)やアレルギ−性鼻炎で、いつも鼻汁・鼻づまりやくしゃみがある子供。
- 食べものの好き嫌いのある子供。
- 滲出液がたまっていてもそのままにしておいてよいのでしょうか
難聴の程度は軽いものですが、学校では先生の話の言葉じりが聞き取りにくかったりするため、授業中にがさがさしたり、おちつきがなくなったりして集中力がなくなり、成績が落ちたりします。
放置しておくと、数年あるいは十数年後には、治療してもなかなか回復しないような難聴になることがあります。また、大人になってから大きな手術をしないと治らない慢性中耳炎になることもあります。
したがって、早期に発見して、きちんとした治療をうける必要があります。しかし、この中耳炎は再発しやすく、しかも治りにくいのが特徴ですので治療は2〜3年から数年にわたることもあります。お医者さんとお母さんとのチ−ムワ−クのもとに気長に治療をうける必要があります。
- 滲出性中耳炎の治療法は
先ず、今の滲出性中耳炎の状態をよくつかまえなければなりません。そのためには鼓膜をよく観察します、それから聞こえの程度を調べます、また中耳の状態を調べる検査をします。そしてその状態にあった治療法を考えていきます。
- 鼻・のどの治療
滲出性中耳炎は耳の治療だけでは治りません。中耳炎をおこしやすくしている鼻やのどの病気を治さないことには、再発を繰り返します。
滲出性中耳炎をおこしている子供は慢性副鼻腔炎(ちく膿症)、アレルギ−性鼻炎、咽頭炎、ぜん息、などの病気をもっていたり、カゼをひきやすかったりすることが多くあります。
これらの病気は鼻の奥の耳管を悪くしたり、咳のため細菌が耳管を通って中耳へ行きやすくなったりします。このために、これらの子供は急性中耳炎をおこしやすくなったり、滲出性中耳炎を繰り返したりします。
これらの病気を治すことが滲出性中耳炎の治療には非常に重要なことです。耳の治療とあわせて、これらの病気の治療を根気よく続けることが重要です。
- 鼓膜切開
中耳腔に水がたまっているときは鼓膜を切開してだしてやらないといけません。
多くはねばっこいので吸引してやらないと排除できません。
これが滲出性中耳炎の治療の原則です。すなわち、中耳腔にたまっている液体を排除することだけで、聞こえは回復します。
この場合鼓膜に小さい穴が残りますが、この穴は数日で閉じてしまいます。そして、二度と貯留液が生じないようにいろいろ工夫がなされます。
- 耳管通気療法・チュービング
しかし、穴が閉じてしまうと、すぐにまた貯留液が中耳腔にたまってくる人がいます。これは中耳腔へ空気が入っていかないためです。
そのため鼓膜切開をした後、耳管を通して空気を送ること(通気療法)が重要になります。
また、鼓膜切開をした穴がしばらくの間閉じないように、小さいチュ−ブを鼓膜にはめます。このチュ−ブは穴の直径1mmですが、これで十分空気の入れ替えは保たれます。
チュ−ブを入れることにより聞こえが落ちることはありません。しかし、チュ−ブを入れている間は、耳に水が入らないように注意しなければなりません。このチュ−ブは数ヶ月経ちますと、自然にはずれてきます。鼓膜の穴が永久に残る心配はありません。
- アデノイド
また、滲出性中耳炎をおこしやすくする病気には他にアデノイド肥大があります。
鼻の奥のところ、鼻からのどにつながるところにアデノイドと呼ばれるリンパ組織があります。しかも、アデノイドはちょうど耳と鼻をつなぐ耳管が鼻の奥に開いているその場所にあるのです。このアデノイドは5歳頃に一番大きくなります。
アデノイドが肥大していると、耳管がふさがれ滲出性中耳炎をおこしやすくなったり、鼻炎や副鼻腔炎を起こしやすくなります。そして「いつも鼻がつまる」「いびきをかく」「口をポカンと開けている」といった、いわゆるアデノイド症状がみられます。
この場合は、アデノイドを手術してとらなければなりません。しかし、アデノイドの手術は滲出性中耳炎に対する根本的な治療ではありません。ですから手術後も治療をつづける必要があります。
- 家庭ではどういうことに気をつけたらよいのでしょうか
滲出性中耳炎の予防は鼻やのどに炎症を起こさないようにすることです。そしてカゼをひいてしまったら、できるだけ早く治して、咳や鼻水を長引かせないようにすることです。そして、子供をよく観察して早期発見、早期治療に努めて下さい。
治療には、まず全身的な健康管理がたいせつです。つまり、体の抵抗力をたかめるために、乳児ではできるだけ母乳を与える、食物の好き嫌いをなくし、栄養のバランスに気をつけ、体をきたえることなどです。また、カゼをひかないようにうがいをして、鼻汁があるときは鼻をすすらないように指導し、正しい鼻のかみ方を教えることも大事です。これらは家庭でお母さんが中心となって行う治療であり、これがもっとも重要と考えられます。
子供は成長して体が丈夫になりますと、中耳炎をおこしにくくなり、またかかっても治るのが早くなります。
いずれにしても、早期発見と根気のいる治療に加えて、家庭での食生活の改善などが、この滲出性中耳炎の治癒を早め、再発を防ぐことになるのです。
ただし、滲出性中耳炎の治療は、聞こえがよくなったからといってそれで終りではありません。健康な正常の鼓膜にもどり、聞こえがよくなり、そうして約1年間、滲出性中耳炎を再発しないことをめどに治ったかどうかを専門医に判定してもらうことです。
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